Tatsuki Tsukada TOPOS Highland 2016_05 H.R

投稿日:

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塚田辰樹 Tatsuki Tsukada Solo
1,August.2016 – 31,August.2016
11:00 ~ 20:00
at Haricot Rouge
トポス高地 アリコ・ルージュ 2016 05
TOPOOS Highland Haricot Rouge 2016
欧風家庭料理店「アリコ・ルージュ」
長野県飯綱町川上 2755 飯綱東高原 飯綱高原ゴルフコース前
phone 026-253-7551
営業時間12時~20時30分
休館・定休日 火曜
http://homepage3.nifty.com/haricot/

toposhr2016-5 / works price list (PDF)
*売約作品は、個展終了後、お引き渡しできますので、ご容赦ください。

コメント

山の木々や岩を分け入って進む。そのうちに、表現しようのない「何かに見つめられている」という感覚が強くなる。ただの自然現象が、まるで意思を持った存在として感じることがある。
そのまなざしは、平野にも潜んでいる。空き地や神社、林。いたずらに人の手の入らない場所では、その土地の「記憶」が残っているからだと思う。

塚田辰樹


 立木を輪切りにした切り口(木口)を版面とする木口木版は堅い木が使われ、堅い版材に鋭い線を刻むことのできるビュランやノミによって彫版する。18世紀末に英国人ビューイックの創始とされ、日本では1887年に伝えられ版が堅牢であるため大量印刷が可能であり実用面でも広く普及した。現在でも緻密細密の手元で灯される技法であり、愛好者も多い。
 この伝統的な技法は、特徴が余すところなく発揮される画面の微細で繊細な近視眼的な毛髪のような線描をまず照らすけれども、塚田辰樹の木口木版は、描かれた「樹々」や「自然景」にこそ彼の主体を感じるのであって、技法は二次的な「都合」として主題の下へ退いている。というのは技法が雛形であり類型が普く並んでいるからでもある。これはいかにも現代的な捉えの感覚なのだろう。
 この国の80年代初頭、様々な混合版画技法が考案されたのは、戦後高度成長期に構増築された公団や住宅の一度目の刷新改築期であり、生活空間の美麗化にともなってオリジナル1点限りの実作よりもはるかに廉価な版画を、生活空間に設置する貧困からの離脱、全中流化という時代の後押しもあった。伝統的木版にシルクスクリーンやリトグラフを重ねたり、素材を張り合わせるコラージュ版下なども試みられた。
 一時大量消費へ向った版画自体、時代が移り変わり、作品そのものの有り様として制作者がその技法に取り組む現在、表出させる制作態度が作品に色濃く顕われる。
 日々の営みの横、夜中や朝などに、手元にほんのり制作者個人の眼差しがすとんと差して、倹しい時間を注ぐかに描かれた塚田辰樹の「樹々」は、ストレス解消と癒しをくだらない生産性の無いゲームに求めるあまたの青年ばかりではない、ぽつねんと存在する孤高の意志の発現と受け止めることができる。

文責 町田哲也


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