丑山直樹 Naoki Ushiyama Solo
[during my focus]
01,June.2015 – 30,June.2015
11:00 ~ 20:00
at Haricot Rouge
トポス高地 アリコ・ルージュ 2015 03
TOPOOS Highland Haricot Rouge 2015
欧風家庭料理店「アリコ・ルージュ」
長野県飯綱町川上 2755 飯綱東高原 飯綱高原ゴルフコース前
phone 026-253-7551
営業時間12時~20時30分
休館・定休日 火曜
http://homepage3.nifty.com/haricot/
丑山直樹展示作品価格表 >> (PDF)
060115 from baeikakkei on Vimeo.
作者が生存している時と、作品だけが遺されている場合では、作品に言及する可能性の幅は随分異なるものだ。生存の仕方を巡ることがつまり同時進行の作品化という表出を呈する作家である時、彼のトータルな現況が即ち作品に対する言説の一部となると考えて差し支えないだろう。
というのも、写真家丑山直樹は、クライアントに従うプロカメラマンを営みとする時間を十年以上過ごし、丁度今回の個展時に、東京から長野へ移動することを決定した。同時にここ数年フィジカルな肉体改造(改造ではなく本来に戻す手法といっていい)に専念し、週に20キロは走る日常の習慣を手にいれている。その前段階として各地で登山を繰り返していた。撮影の初期には、下北沢での人間観察的シリーズの作品制作から、海から戻ってくるサーファーを撮影する作品を展開し、その後盗撮的なショットからの選別作品に移行し現在に至っている。
タイトルに付された「焦点までの間」とは、自身のフォーカスするしないという目的あるいは結果を問題とするのではなく、フォーカスするかしないかという迷い自体の移動的時間である中途を意味しているという。つまり写真という撮影からプリントという現実を見直す彼のシステムは、アウトフォーカスの画像を廉価な藁半紙にプリントする展開において、焦点移動の最中という状況を柔らかく薄い紙に投影させた作品ということになる。この未決定という領域を定着させるベクトルは特に写真の場合、殊に現代においては先鋭的なスタンスである。
昨今の携帯電話然りデジタルカメラも同様、デバイスありきデバイスの機能に牽引される現代社会において、利便さと人間本来の知覚や体感とそれに伴う認識には、どこか違うという違和感、齟齬の感が拭えない。つまりテクノロジーに促される構造にはどうも決定的な不具合があって、そこから如何に離脱し、健全な肉体と精神を取り戻すかが、彼のアウトフォーカスに示唆されているとも言える。
また同時に、丑山は盲人走者の伴走トレーニングを行い、世田谷の公園で生存する浮浪者に声をかけるなど、所謂社会的アシストとしての視点に興味を抱き、ミニマルな生存の仕方の探求をはじめている。これは今後の彼の作品の展開に大いに関わることであるから、注視していきたい。文責 町田哲也